「 今月のおすすめワイン 」

★12月のお勧めボトルワイン
MOREY ST-DENIS (Dujac) '09 \18,000
モレ サン ドニ (デュジャック)
「ジュヴレ・シャンベルタン」村、「シャンボール・ミュジニ」村という2つの有名な村に挟まれているため、「モレ・サン・ドニ」村は1960年代ごろまでほとんどのワインがネゴシアンに販売されていました。「モレ・サン・ドニ」と言っても売れない時代だったんのです。それを押しも押されぬ銘醸地として有名にしたのが、「ドメーヌ・デュジャック」です。創設者の“ジャック・セイス”は「ベルギー」出身で、ドメーヌ創設の前に2ヴィンテージを「ブルゴーニュ」で過ごし、“ジェラール・ポテル”の元、「ドメーヌ・プス・ドール」でワイン造りを学び、その間に、「DRC」の“オベール・ド・ヴィレーヌ”や「アルマン・ルソー」の“シャルル・ルソー”らと親交を深めています。そして1968年に4.5haの「ドメーヌ・グライエ」を買い取り、自らの名前、“ジャック”をもじって「ドメーヌ・デュジャック」と名付けたのでした。
できる限り自然にまかせたワインを醸造し、今でこそ珍しくはなくなったノンフィルター、ノンファイニングという新手法を取り入れ、当時はとても話題になりました。でも、それは単なる話題づくりではなく「テロワールの尊重」だったのです。
現在は“ジャック”の息子、“ジェレミー”と“アレック”がそれぞれ醸造と販売を担当し、ドメーヌを実質的に引き継いでいます。“ジャック”の妻も“ジェレミー”の妻も「アメリカ」人で、“ジェレミー”夫人“ダイアナ”は醸造学を修めたエノローグでもあります。2000年に“ジェレミー”は父のサポートの元、ネゴシアンビジネスを開始。その名も「デュジャック・フィス・エ・ペール」といいます。会社名として「ペール・エ・フィス」(父子)という表記はよく見かけますが、「フィス・エ・ペール」(子父)は珍しいようです。中心となるのが息子であることの証だそうで・・・。
この「デュジャック・フィス・エ・ペール」は、ネゴシアンといっても単に畑が自分たちが所有していないだけで、畑の管理や手入れ、ブドウの収穫までドメーヌのスタッフが行っているのです。ブドウの購入契約は量に応じてではなく面積単位、したがって収量制限も思い通りとなるのです。したがって、実質的にはドメーヌものと変わらないものの、ドメーヌとネゴスで重複するアペラシオン(例えば村名モレ・サン・ドニ)があってもそれぞれ別々に醸造、瓶詰めされる。
2005年には「ヴォルネ」村の「ドメーヌ・ド・モンティーユ」と共同で「ドメーヌ・トマ・モワイヤール」を買収。これにより、ドメーヌのポートフォリオは一層華やかさを増し、「シャンベルタン」と「ロマネ・サン・ヴィヴァン」が増え、グラン・クリュだけで7つとなりました。
もともと所有していた「ボンヌ・マール」と「ヴォーヌ・ロマネ」1級の「ボーモン」は面積が増し、「ヴォーヌ・ロマネ」村でも最高の1級畑と謳われる「マルコンソール」には新たに1.57haという広い面積を所有することになりました。
栽培では1987年からリュット・レゾネをとり、2001年からは徐々にビオロジックへと移行。現在はビオディナミ農法を大半の畑で採用しています。
“ジャック”時代のワイン造りは完全無除梗による全房醸造がこのドメーヌの特徴であり、梗が色素を吸収するためワインの色調は比較的淡く、しかしながら香りと味わいはしっかりしているというものでした。“ジェレミー”になってからはヴィンテージに応じて除梗率を変え、以前よりも色合いはしっかり、果実味も充実したものとなっています。
今回おすすめの「モレ・サン・ドニ‘09」は正真正銘ドメーヌものです。村名「モレ・サン・ドニ」はおもに「シャンボール・ミュジニ」村寄りの「ポルー」に、「クロ・ソロン」のブドウをアッサンブラージュされています。「デュジャック」のワインは明るい色からは想像がつかないほどのパワーを持つ味に仕上がっていますが、口に含んだあと、ワインはスルリスルリと喉の奥まで入り込みます。果実味、酸味、ストラクチャーのコンビネーションは絶妙です。余韻に長く残る果実の風味も素晴らしいのですが、口の中にふんわりと残るきめ細かなタンニンも何とも言えません。
パワーが持ち味の「ジュヴレ・シャンベルタン」や、エレガントさが長所の「シャンボール・ミュジニ」とは全く違う、柔らかいながらも決して折れることない、強さを持ったしなやかさ。モレ・サン・ドニの真髄をぜひご堪能下さいませ。
(2014.12.01[MON])