
「七周年」を迎える、今月のおすすめワインは、孤高のシャンパンハウス“クリュッグ”の「ノン・ヴィンテージ」シャンパンの最高峰、「グランド・キュヴェ」です・・・思い起こせば、七年前の開業時分、お祝いでお越し頂いた「常連様」に、このシャンパンと先代が残していかれた、輪島塗の「お弁当箱」に盛ったお付出しとで、お披露目したものです・・・あの時分は、そんな「おもてなし」に「4ケース」程使ったり、グラスシャンパンでもお出しすることができましたが、今や価格も当時の「2倍」近く・・・“ここぞ!!・・・”という時でも「ケース買い」は、さすがに勇気が要ります・・・その「プレステージ・シャンパン」の「至高」の理由を「ソムリエ・森下」のご案内で解き明かして下さい・・・。
★3月のお勧めボトルワイン
KRUG GRANDE CUVEE BRUT 30,000 (34,650)
クリュッグ グランド キュヴェ ブリュット
「クリュッグ」は、1843年にドイツの「マインツ」出身で(後にフランスに帰化)1840年から「ジャクソン」で働いていた“ヨハン・ジョセフ・クリュッグ”によって「ランス」に設立されました。この初代“ジョセフ・クリュッグ”から始まる「最高のシャンパンのためにはあらゆる努力を惜しまない」という考え方は、「クリュッグ」のシャンパーニュづくりの基本として代々忠実に守り続けられています。
伝統と情熱が息づく「クリュッグ」のシャンパンは世界中で絶大な賞讃を受けており、熱狂的「クリュッグ」ファンに冠される「クリュギスト」という言葉まで生み出されるほど。ファッション界の女王“ココ・シャネル”、文豪“ヘミングウェイ”、希代の歌姫“マリア・カラス”は“クリュッグ”家が認める3大クリュギストとして有名です。
「クリュッグ」のキャラクターを決定付けるオークのバリック(小樽)による一次発酵は、初代“ジョセフ”から続く伝統的製法のひとつで、現在、一次発酵のすべてをバリックで行うのは「クリュッグ」のみです。平均して35年の古樽のなかで低温・長期醗酵させることで優れたブーケと複雑でしっかりした素質が生まれています。その他、時間をかけて澱抜きを手作業で行い、フィルターは使用せず、ごく微量のドサージュ、最上のコルクの使用など徹底して厳格な創立以来のスタイルを貫いています。もっとも普及品である「グランド・キュヴェ」でさえ、小樽で1次醗酵を行い、40数種類(約47種類)にも及ぶキュヴェ、クリュの異なる6~10年もののヴァン・ド・レゼルヴをブレンドし、およそ5~7年寝かせます、これこそがグランド・キュヴェを「ノン・ヴィンテージ」でなく、「マルチ・ヴィンテージ」と呼ぶ所以です。
1860年代からは、類稀なる醸造家でアッサンブラージュの魔術師とも言われた息子の“ポール・クリュッグ”と親子二人で「クリュッグ」のスタイルを確立、発展させていきますが、1880年にイギリス向けにリリースした、現在の「グランド・キュヴェ」の原型となるシャンパン「プライベート・キュヴェ」は、息子“ポール”の卓越したアッサンブラージュの技術が存分に発揮され、「クリュッグ」に一つの完成形を与えたといえます。
「クリュッグ」は、資金調達のために大手企業(「レミー・マルタン」の傘下から「LVMH」の傘下へ)から財政援助を受けていますが、創業者一族がその伝統的な醸造方法を固く守りながら運営しています。
「クリュッグ」では、1970年になるまで自社畑を所有していませんでしたが、安定的なブドウの確保のために、4代目“ポールⅡ世”の時代の1970年~1972年にかけて「レミー・マルタン」社の援助を受け、全て100%格付けのブドウ畑26.74haを取得しています。この大きさは他のグラン・メゾンと比べると小さいものですが、年間生産量が50万本という「クリュッグ」においては、これだけでブドウの自給率は40%になります。
5代目“アンリ・クリュッグ”は、1983年に「クリュッグ・ロゼ」を生み出し、2008年には、「クロ・デュ・メニル」に続く単一畑キュヴェ「クロ・ダンボネ」をリリースします。現在、“ポール2世”の長男“アンリ・クリュッグ”氏が5代目として社長を、弟の“レミ・クリュッグ”氏が専務と兄弟で事業を引き継いでいます。
色調は光り輝く明るい金色、非常にきめ細かな泡は繊細でありながら強い生命力を感じさせてくれます。マルメロ、ハチミツ、ブリオッシュ、柑橘類を砂糖漬けにした香りが妖艶に立ち上がり、新鮮で深いミネラル香が後から追いかけてきます。しっかりした味わいは芳醇な果実味と樽熟成から生まれたオークのフレーバーが見事に調和したもの。まさに綿密なアッサンブラージュがもたらす奇跡の「シャンパーニュ」に仕上がっています。是非、ご指名下さいませ!!!。
(2010.3.1[TUE])